カテゴリー: 研修医, 学生向け

  • 胃管

    胃管

    【目的】

    • 注入目的
      • 経口摂取困難な患者
      • 口腔内, 中-下咽頭術後の患者
    • 減圧, 排液目的
      • 消化管の手術後の減圧が必要な患者
      • 腸閉塞の患者
      • 胃洗浄が適応となる薬物中毒などの患者
        *1時間以内に中毒性の高い薬物を大量に内服している場合
    経鼻栄養カテーテル経鼻減圧カテーテル
    (散布チューブ)
    目的栄養, 水分, 薬剤を投与・消化管内容物, ガスを胃から
    排出する
    ・胃洗浄を行う
    サイズ5-12Fr12-20Fr
    留置期間4週間以内2週間
    先端形状先端開口タイプ
    先端未開口タイプ
    側孔2孔式
    など
    側孔, 多孔
    (排液がたまり閉塞リスクが
    あるため)
    材質ポリ塩化ビニルや
    ポリウレタン, シリコン
    など
    ポリ塩化ビニル*

    図(参考文献1から引用):左 先端開口タイプ, 右 側孔, 多孔タイプ

    図;参考文献17から引用

    *排液用チューブは長期留置を目的としていないため安価なポリ塩化ビニル
    →長期留置すると可塑剤が流出して硬く変質してしまう

    ■注意点

    <誤嚥性肺炎>

    • 誤嚥性肺炎患者の場合, 絶食+胃管/補液で管理することが多い印象.しかし. 誤嚥性肺炎患者に対する経鼻栄養カテーテルはその後の肺炎発症の有意なリスク因子
      →誤嚥性肺炎だから経鼻栄養カテーテルではなく, 上記の適応かどうかで判断するのが望ましい

    【禁忌】

    • 顎顔面外傷:胃管挿入時頭蓋底に迷入する可能性があるため
    • 食道の異常:狭窄や腐食性物質(強酸, アルカリ)の摂取後などでは穿孔のリスクが高い
      *静脈瘤での胃管での出血のリスクがあるため慎重に行う

    【知識】

    • 看護師も挿入可能

    【選び方】

    • 太いとコシが強く屈曲が起こりにくく入れやすいが, 穿孔のリスクが高くなること, 患者の不快感が強くなり自己抜去のリスクが上がる
    • 半消化態栄養剤や薬剤を使用する場合8Fr以上
    • 経口摂取と併用する場合は10Fr以下
    • ドレナージ目的であれば12Fr以上

    【手順】

    <確認事項>

    ■挿入前

    • 既往歴
      • 食道裂孔ヘルニアや心肥大による食道圧迫の有無の確認
    • 挿入する長さの計測
      • 鼻~耳~喉頭軟骨~心窩部方式
      • 簡易式:長さ=身長x0.3+100mm
    図:参考文献15から引用

    ■挿入後

    • 減圧目的の際, 排液の色, 性状, 量を確認する
      *経鼻栄養カテーテルでも胃液が逆流してくることがあり,その時は性状の確認することが重要

    <流れ>

    • カテーテル先端10cm程度に潤滑剤を塗布
    • 患者の体位を40-60度程度のファーラー位にする
      また, 口呼吸するように頸部をやや後屈させる
    図:参考文献17から引用
    • カテーテルが通過しやすいように挿入する鼻孔の反対側に頸部を向けて, 挿入側の梨状陥凹を広げる
    • 左外鼻孔を選択する方が挿入しやすい
      *食道は一般的にわずかに左側に位置するため
      **反回神経麻痺がある場合は, 健側を広げるように患側に首を回旋させる
    • 15cm挿入したあたりで嚥下を促し, 嚥下のタイミングに合わせてゆっくり進める
      *患者にとってここが一番の苦痛
      **嚥下反射, 咳嗽反射が低下している場合気管への誤挿入のリスク
    図:参考文献1から引用
    https://youtube.com/watch?v=beIAdeuDiy0%3Fsi%3DAObT03pVjHyJP8I-
    • 20cm程度進めた段階で, 開口してもらい口腔内でとぐろを巻いていないかチェックする
    • 予定した長さに到達したら, 鼻翼, 頬に仮固定して胃内留置確認を行う
      • ENシリンジを接続し, 胃液の吸引を試みる
        *胃内容物が十分なければ吸引できない
      • 聴診器を心窩部に当てて, 15mL程度の空気を注入し, 水泡音を確認する(送気・聴診法)
        *送気・聴診法は正答率60%といわれている
      • X線撮影で胃内に留置されているかを確認する
        • チューブが食道内で屈曲して胃内
        • 先端が横隔膜を超えている
          *胃を突き破っていてもこれらは満たしている
          →X線検査は気管迷入していないかを見極める方法として有用
        • free airや縦隔気腫など穿孔の可能性も確認する
    • 本固定を行う
    • スタイレットをカテーテルが動かないように注意しながら抜去する
    • カルテに挿入した鼻の左右, 長さ, 胃内留置確認の手段を記載する

    【コツ】

    ■抵抗を感じた際

    まず鼻孔からの長さで現時点での位置を大まかに把握することが重要

    鼻腔からの距離位置
    20-25cm梨状窩, 披裂部などの食道入口部付近(生理的狭窄部)
    →顔の向きを変えたり,反射性嘔吐を利用する
    30-40cm気管迷入
    →一度15cm程度まで戻してから再挿入
    気管・大動脈交差部(生理的狭窄部)
    →抵抗を感じながら無理に進めると穿孔のリスク
    45-50cm噴門部(生理的狭窄部)
    →ゆっくり進める,ねじりながら入れるなど

    ■メンデルソン法

    • 随意的に舌骨と喉頭を高い位置に維持させて喉頭挙上を補強する嚥下障害のリハビリの一つ
      しかし, これは用手的に食道入口部を開大できる
      (逆セリック法)
    図:参考文献17から引用
    図:参考文献17から引用

    ■反射性嘔吐と咳反射

    • 舌根や咽頭での刺激で反射性嘔吐が, 喉頭での刺激で咳嗽反射が誘発される
      *咳受容体は咽頭にも存在しているといわれる

    <嘔吐反射>

    • 舌根や咽頭に刺激が加わると三叉神経や舌咽神経を通して嘔吐反射が誘発される(反射性嘔吐)
    • 嘔吐反射が起こる際, 声帯は閉鎖される
      →嘔吐反射が起こっている間は気管迷入のリスクは低い
      *嘔吐後吸気時は声帯が開くため注意

    <咳反射>

    • 咽頭刺激により咳受容体が刺激される+気道分泌液排泄が亢進され気管支内の咳受容体も刺激される
    • 咳反射では声門が一旦閉鎖し胸腔内圧を高め, その後急激に開放して咳が生じる
      →咳をしている時に胃管を進めるのは気管迷入のリスクが高くなる

    ■胃管を冷蔵する

    • 胃管は体温で硬さが変化する素材を使用している
      →冷蔵や冷凍することで胃管にコシを持たせることができる

    【合併症】

    • 気管迷入
    患者側要因・嚥下機能低下
    ・意思疎通困難
    ・身体変形
    (気管切開. 円背, 頸椎損傷など)
    ・咳嗽反射の減弱, 消失
    ・誤嚥性肺炎の既往
    その他・挿入困難歴
    • 気胸:気管支から肺を突き破る
      *多くが胸腔ドレナージを必要とした
    • 肺炎:口腔内分泌物増加, SpO2低下, 発熱などを認める
    • 鼻出血
    • 消化管穿孔:バイタル変化, 疼痛, 出血/吐血が出現
      →栄養剤など投与による腹膜炎
      *スタイレット付きはコシが強い分穿孔のリスク
      **食道の生理的狭窄部位(上記参照)で起こりやすい

    【日常の管理】

    • 挿入後重篤な合併症を避けるために, 初回は日中に水(50-100mL)を投与する
    • 栄養剤や内服薬を投与する前にマーキング位置を確認する
    • 咳嗽や喀痰の吸引で先端が抜けてくることがあるため定期的にX線撮影などで確認する
    • 絶食時は唾液分泌が低下するため, 口腔ケアが重要
    • 投与速度, 時間の管理
      重症患者では交感神経亢進や薬剤などにより蠕動運動の低下と消化吸収能力の低下を認めている
      →栄養は持続投与で開始する
      • 目標投与量の1例:
        非タンパク熱量25~30kcal/kg/日、タンパク質1.2~1.6g/kg/日
      • 目標投与量までのあげ方の例:10mL/hずつ12-24時間ごとに挙げていく
      • 胃残250-500mL以下であれば経腸栄養は継続でよい
        *胃残が少ない群と肺炎, 誤嚥, 嘔吐のリスクは変わらなかった
    図;参考文献14より引用

    【最近の知見】

    • 胃内留置の確認方法として呼気二酸化炭素検出器の使用が注目されている
      • 気道迷入した場合に二酸化炭素を検出し, 変色する
      • 10例中10例で胃内に正しく留置された
      • X線検査が容易にできない施設などで導入され始めている

    【参考文献】

    1. 田中美奈子. 識の再点検 胃管カテーテル・胃瘻カテーテル. Expert Nurse. 2025;41(5).
    2. Metheny NA, Meert KL. Enteral feeding tubes: placement, verification, and complications. Nutr Clin Pract. 2014;29(6):738‑752. doi:10.1177/0884533614552366
    3. Bankhead R, Boullata J, Brantley S, Corkins M, Guenter P, Krenitsky J, et al. Enteral nutrition practice recommendations. JPEN J Parenter Enteral Nutr. 2009;33(2):122‑167. doi:10.1177/0148607108330314
    4. 日本静脈経腸栄養学会 編. 静脈経腸栄養ガイドライン 2023. 東京: 南江堂; 2023.
    5. 小山善之, 藤谷順子. 経腸栄養の基礎と臨床. 医学書院; 2019.
    6. Taruno Y, Okazaki Y, Sherwood MW, et al. Channel synapse mediates neurotransmission of airway protective chemoreflexes. Cell. 2025 Apr 5;188(7):1456‑1472.e12. doi:10.1016/j.cell.2025.04.005.
    7. 村木正人. 咳嗽の臨床. 近畿大医誌 (Med J Kinki Univ). 2010;35(3-4):145‑149.
    8. Ebihara S. Dysphagia and cough reflex in the elderly. Jpn J Geriatr. 2019;56(3):345‑352.
    9. YouTube. 【嚥下の仕組みと誤嚥】. YouTube. Published 2025
    10. 医学書院. レジデントノート 2014年1月号. 東京: 医学書院; 2014
    11. 嘔吐について 桑原志都夫
    12. 奥谷圭介, 野村友紀子, 寺田祥子. よくあるトラブルを乗り越えよう 2 噴門で抵抗があって胃管が入らない. レジデントノート. 2014;16(1):92‑95.
    13. 進行性認知症患者における肺炎リスク:経鼻胃管栄養と慎重な食事介助の比較(Reduced Pneumonia Risk in Advanced Dementia Patients on Careful Hand Feeding Compared With Nasogastric Tube Feeding)(Yuen JK, et al. J Am Med Dir Assoc. 2022 Apr 27;S1525-8610(22)00255-9.
    14. 日本静脈経腸栄養学会. 経管栄養開始時のチューブ先端・胃内残量評価の必要性 JSPEN. 2015;30(2):679‑684.
    15. 看護roo!編集部. 「経鼻栄養チューブの誤挿入」による事故を防ぐ、栄養剤投与前の5つの観察ポイント. 看護roo! 学び. 2019 Jan 16.
    16. 山元恵子, 佐藤博信. 安全な経鼻栄養チューブの挿入長さと条件. 医科器械学 (Jpn J Med Instrum). 2016;86(5):459‑464.
    17. 医療事故調査・支援センター. 医療事故の再発防止に向けた提言第6号: 栄養剤投与目的に行われた胃管挿入に係る死亡事例の分析. 東京: 医療事故調査・支援センター 一般社団法人 日本医療安全調査機構; 2018 Sep

  • hospital-acquired disability(HAD)

    hospital-acquired disability(HAD)

    【定義】

    <hospital-acquired disability(HAD)>

    • 入院中に新たに生じた, または悪化した機能低下
    • 入院時から退院前日までのBarthel index(BI)の5ポイント以上の減少
      =1つ以上のADLを自立して完了する能力が介助を要する状態になる

    <BI>

    • BI>70をADL自立と定義する

    図:参考文献1から引用

    【知識】

    • 入院中の高齢患者の25-50%に発症する
    • 外来治療で十分治療可能な入院患者では発症率が低い(16%程度)
    • 入院後死亡率(特に退院後1年死亡率)の強力な予後因子

    【リスク因子】

    素因高齢
    入院前からの要介護,要支援状態
    糖尿病の合併
    入院時の低Alb血症
    認知機能障害
    病院関連要因尿道カテーテル留置期間の延長(中央値3日)
    移動制限, 身体活動の低下
    せん妄
    院内感染
    退院後要因退院計画の質
    地域社会の支援

    【予防】

    • 栄養の管理
    • 早期リハビリテーション
      *血行動態などを見ながら
    • 尿道カテーテルの早期抜去

    【参考文献】

    1, 厚生労働省.令和3年度 医療施設調査・病院報告の概況. 2022年3月31日
    2, Ponikowski P, Voors AA, Anker SD, et al.
    2021 ESC Guidelines for the diagnosis and treatment of acute and chronic heart failure. ESC Heart Failure. 2021;8(6):1069–1150.
    3,Bozkurt B, Coats AJS, Tsutsui H, et al.
    Universal Definition and Classification of Heart Failure: A Report of the Heart Failure Society of America, Heart Failure Association of the European Society of Cardiology, Japanese Heart Failure Society, and Writing Committee of the Universal Definition of Heart Failure. Journal of Cardiac Failure. 2021;27(4):387–413.
    4, 加藤倫哲, 櫻田宏治, 高橋哲也.
    高齢心不全患者における Hospital Acquired Disability 対策としての循環器理学療法. 循環器理学療法学. 2022;1(1):24–30.
    5,Katz S, Akbar S, Boustani M, et al.
    Frailty, Cognitive Impairment, and Functional Disability in Older Adults: Implications for Clinical Practice. Journal of the American Geriatrics Society. 2022;70(12):3510–3522.

  • 採血管について

    採血管について

    血液検査の手技が分かっても採血管についての知識がなくては適切に検査結果を理解することはできません。
    基礎からやっていきましょう。

    種類

    1, 凝固促進剤

    ・シリカゲルの微粒子や珪藻土, トロンビンなど
    ・血清(血液が凝固した血餅を分離した上澄み)を得るために, 凝固反応を終了させる必要がある

    2, ヘパリン

    ・酸素分圧, 二酸化炭素分圧など血液中のガス分析に使用
    ・ヘパリンはアンチトロンビンⅢを促進し, トロンビンを不活性化することで凝固反応を阻止する
    ・陽イオンの濃度に影響を与えない

    3, EDTA塩類

    ・EDTAは様々な電荷の陽イオンと錯体を形成する性質を持っている
    →血液と混和すると凝固反応に必要なCa2+がキレートされ凝固反応を阻害する


    ・EDTAは金属依存性プロテアーゼの活性を抑えるため, ペプチドホルモン(インスリンやGLP-1. PTHなど)の分解を妨げる
    →一部のペプチドホルモン採血にも適している

    <EDTA依存性偽性血小板減少症(EDP)>

    ・EDTA塩の存在下で血小板凝集が生じる現象のこと
    ・GPⅡb/Ⅲaなどの血小板膜上の膜たんぱく質に配位しているCa2+イオンがキレートされることで構造が変化し潜在性抗原が露出する
    →患者の血中の免疫グロブリンがそれに反応して凝集が起こる
    ・悪性腫瘍, 肝疾患, 自己免疫疾患, 抗菌薬投与中などの免疫刺激状態と関連が指摘されているが, 健常者でも認めることがある
    ・対応:

    土屋直道,松尾収二:EDTA依存性偽性血小板減少症における血小板数推移パターンおよび抗凝固剤としての硫酸マグネシウムの有用性.Sysmex Journal Web.2019;20(3):1–9.から引用

    4, クエン酸ナトリウム

    ・血液との割合を正確に分注する必要がある
     ・凝固/線溶系:1:9
     ・赤沈:1:4
    ・EDTAと比べて弱いCa2+キレート作用を有する
    →塩化カルシウム添加により凝固反応を再開させることが可能

    採血管の順序

    ・凝固管:組織液に含まれる組織トロンボプラスチンの混入をさせない
    *PT, APTTは優位差ないが, TATなどを採取する際に影響がある可能性がある
    →1本目を避ける

    検査結果に影響を及ぼしうる要因

    1, 血液成分の生理的変動や食物摂取など

    1-1:日内変動

    1-2:月経変動


    1-3:食事摂取
    →早朝空腹時採血で統一するのが望ましい

    2, 手技

    2-1:体位

    ・立位では重力により下肢の毛細血管内圧が仰臥位に比べ上昇する
    →水や電解質などの低分子物質は血管から組織間質に漏出する
     +循環血漿量が立位は仰臥位に比べて10%低下する
      →蛋白質や脂質などの高分子物質や血球成分は約10%濃縮される
       *座位では約5%
       +循環血液量低下によるレニン,カテコールアミン,アルドステロンの上昇, ANP,BNPの低下などがみられる可能性がある

    (内科医が知っておくべき検査の最新情報;臨床検査の進歩より引用)

    2-2:採血部位

    *pO2, PCO2は中心静脈と末梢静脈でも差が出るため注意!

    2-3:駆血

    ・駆血時間が長引くと, 徐々に末梢の静脈内圧が上昇
    →水, 電解質, グルコースなどの低分子物質が血管外へ漏出
    →高分子物質や血球成分の濃度上昇
    ・特に5分以上の駆血は採血結果に影響を及ぼす
    →1分以内の採血が推奨されている

    (内科医が知っておくべき検査の最新情報;臨床検査の進歩より引用)

    ・クレンチング, 手を強く握る,叩く:血清K濃度の上昇をする報告がある
    *クレンチング:手掌を開閉させて静脈の怒張を促すこと

    2-4:溶血

    原因機序対応
    アルコール綿穿刺時にアルコールが血液中に混入
    *アルコールは赤血球膜を直背う障害する
    十分に乾燥させる
    23Gより細い針や
    直針での採血
    急速な吸引や採血管への分注で血液が泡立つ22G以下の採血針を使用する
    吸引を緩徐に行う
    規定量取らない採血管内に陰圧が残る必要量を採取する

    2-5:分注

    ・採血管内に含まれる凝固促進剤などの採血管添加物が後方針やゴムスリープを介して次の採血管に混入する恐れがある
    →血液の逆流を抑えて分注を行う

    2-6:その他

    ・直射日光:ビリルビンやCK, ビタミンC, 葉酸などが低下する
    ・血糖:全血での採血では血球に含まれる解糖系が進む
       →フッ化ナトリウムなどの解糖阻止剤入りを使う

    参考文献

    ・内科医が知っておくべき検査の最新情報;臨床検査の進歩

    ・土屋直道,松尾収二:EDTA依存性偽性血小板減少症における血小板数推移パターンおよび抗凝固剤としての硫酸マグネシウムの有用性.Sysmex Journal Web.2019;20(3):1–9.

  • 医療用針について

    医療用針について

    【目次】
    ・種類
    ・注射針(ステンレス製)
    ・翼状針
    ・血管留置針
    ・カテラン針
    ・硬膜外麻酔針
    ・スパイナル針
    ・ポート針

    【種類】

    種類特徴/構造主な用途
    注射針
    (ステンレス製)
    一般的なディスポ針
    長さや太さが多様
    静脈注射、筋肉注射、皮下注射など
    翼状針翼状の持ち手付き。静脈採血、点滴
    血管留置針プラスチック製カテーテル付き点滴、Aライン
    カテラン針長めの金属針
    70mm前後
    深部注射や神経ブロック
    硬膜外麻酔針適度なコシと鋭利な刃先を持つ硬膜外麻酔
    スパイナル針刃先が工夫された穿刺用針脊髄くも膜下腔への麻酔、髄液検査
    ポート針
    (ヒューバー針)
    先端が加工されCVポートを傷つけないように設計CVポートに留置

    【注射針(ステンレス製)】

    <使用目的>
    ・動静脈からの採血や薬剤をアンプルやバイアルから吸引、薬剤の注入など幅広い範囲での使用


    ・一般的には直針といわれるもの
    ・シリンジと接続して使用する

    <種類>
    注射針のカラーは針の外径(ゲージ)を識別するためにISO規格で統一されている
    *注意:注射針と末梢血管留置針では色が違う!!

    ゲージ(G)用途
    18Gピンク輸血
    21G深緑RB:筋肉内注射
    SB:静脈内注射
    22G皮下注射、筋肉内注射、静脈内注射
    23G皮下注射
    26G皮内注射

    <知識>
    ・痛みを軽減させるために刃先に潤滑剤としてシリコン油が塗布されている
    ・針先の加工で違いがある
     ・RB(レギュラーベベル):針先の角度を12度ほどと鋭くした設計。皮下注射に特に用いられる
     ・SB(ショートベベル):針先を18度とやや急勾配で抵抗が大きく切れ味が鈍くしている。それにより血管を過度に傷つける可能性を減らす。

    【翼状針】

    <使用目的>
    ・もともとは新生児用の輸液路として頭皮静脈から薬剤を注入する目的で作られた。
    ・針を固定しやすく静脈点滴や採血、在宅自己注射に使用される。

    <知識>
    ・色は注射針と同じ
    ・一個約20円と注射針(約8円)+シリンジ(約8円)よりやや高価

    【静脈留置針】

    <使用目的>
    ・末梢静脈路留置
    ・中心静脈カテーテルのイントロデューサ
    ・末梢動脈路(Aライン)留置

    <知識>
    ・内針とカテーテルから作られている。
    ・穿刺力が強いほど痛みがつよく、静脈炎のリスクになる
     穿刺力:針の太さや
    ・安全機構付きが今は主流
     →あらかじめ使い方を把握しておくこと
      *メーカーによって仕様が異なる
    ・逆流防止弁:内筒を抜いても血液が外筒の外に漏れない
     *シリンジを押し込めば吸引もできる

    引用:神戸大学医学部附属病院 ICT部門. 『安全マニュアル 第1版』.
    https://www.hosp.kobe-u.ac.jp/ict/PDF/anzenmanual/1super.pdf(2025年10月19日アクセス)
    ・値段は150円-500円と幅がある
     *逆流防止弁や安全機構の有無など
    ・ゲージによって色が分けられている
    *注射針と色が違うので注意!!

    ゲージカテーテル外径
    16G1.7mm灰色
    18G1.3mm深緑
    20G1.1mmピンク
    22G0.9mm濃紺
    24G0.7mm黄色

    <失敗する原因2選>
    ・深く針を入れすぎてしまい、内針が血管の前後壁を突き破ってしまった。
     →数mm単位で静脈留置針を戻し、再び逆血が得られたところでカテーテルを進める

    ・血液の逆流はあるもののカテーテルを血管内へ留置できない
     内針とカテーテルとの距離を考慮できていない
     →逆血を得られてから数mm先進させる必要がある
     *無理に押し込むとカテーテルが血管外で留置される可能性があるためしない。

    【カテラン針】

    <使用目的>
    ・膝蓋腔や肋膜からの採液、膝関節/肘関節への造影剤の注入
    ・体内深部への穿刺や注射

    <構造>
    ・注射針の針の長さ(25mm-32mm)より長いもの(60mmと70mm)

    【硬膜外麻酔針】

    <使用目的>
    ・外科用穿刺針(主に硬膜外麻酔で行います)

    <使い方>
    ・穿刺部を決まる
     ・上腹部手術:Th7/8付近(術野で調整)
     ・下腹部手術:Th8-11(術野で調整)
     ・下肢や無痛分娩L2-5付近
    ・硬膜外針の刃面を患者の頭部に向けて、皮膚から垂直に刺します。
    ・針を進めていくと、黄色靭帯を越える際に抵抗感が増し、その後に抵抗感が消失するポイントで、硬膜外腔に達したことを確認します。
    ・カテーテルを硬膜外針に通して硬膜外腔へ挿入します。
    ・針が正しい位置にあるか、シリンジの抵抗の変化やテストドーズ(少量の薬剤を注入して、くも膜下腔に誤って入っていないか確認する方法)などで確認します。
    ・カテーテルを挿入し終えたら、硬膜外針だけを慎重に抜去します。
    ・カテーテルを皮膚にテープで固定し、感染予防のためにフィルムドレッシング材で保護します。

    <禁忌>
    ・頭蓋内圧亢進→脳幹ヘルニアを起こす可能性がある
    ・協力が得られない場合:正確な穿刺ができない
    相対的禁忌
    ・既存に神経/筋疾患, 糖尿病性末梢神経障害などで下肢に後遺症がある場合:神経損傷に気が付けない
    ・出血傾向

    <合併症>
    ・硬膜外血腫
    ・硬膜外膿瘍
    ・神経障害

    【スパイナル針】

    <使用目的>
    ・脊髄くも膜下麻酔
    ・ルンバール(髄液検査)
    ・髄内薬剤投与

    <使い方>
    ルンバールの手技。

    <基礎知識>
    ・1本200円弱
    ・ヒューバーポイント:先端部が減径加工しており、硬膜損傷を最小限にしている

    【ポート針】

    <使用目的>
    ・CVポートに留置する

    <特徴>
    ・一個40円ほど
    ・針先が特殊加工:先端が側面に来るように少し折り曲げてある
    →セプタム(ポートのゴムの部分)を普通の針では内腔で削ってしまう
     ヒューバー針は側面に内腔があるためセプタムを削らない
    →CVポートを長期間使用できる/薬剤が漏れることがない


    ケモサポート.jp. ヒューバー針について. https://chemo-support.jp/medical-apparatus/huber-needle.html(2025年10月19日アクセス)

  • 血液検査

    血液検査


    🩸採血の基本

    血液検査は基本中の基本。ですが、今までペンしか握っていなかった研修医になりたての人にとっては人に侵襲を与える最初の難関ですね。
    手順や注意点などしっかり知識を身に着けて自信をもってやりましょう。

    目次

    1. 採血の目的と種類
    2. 必要な準備物
    3. 採血の手順(静脈採血)
    4. 基礎知識
    5. よくある失敗と対処法
    6. 安全管理と感染対策
    7. 想定外の対応について

    1. 採血の目的と種類

    採血は診断・治療方針の決定に不可欠な検査です。目的に応じて以下のような種類があります。

    • 静脈採血:最も一般的。血液検査全般に使用。
    • 動脈採血:血液ガス分析などに使用。穿刺難度が高く注意が必要。
    • 毛細血管採血:新生児や糖尿病患者の血糖測定などに使用。

    2. 必要な準備物

    • 手袋, アルコール綿, 駆血帯
    • 採血針(翼状針/直針), 真空採血管,ラベル
    項目翼状針直針
    構造羽根状のウィング付き。柔軟なチューブで接続されており、保持しやすい。針とホルダーが一体化した直線構造。
    穿刺成功率高い
    (特に細い血管や高齢者・小児に有効)
    標準的な血管では問題ないが、細い血管では失敗率がやや高い傾向
    患者の痛み少ない傾向やや強いと感じる患者もいる
    神経損傷のリスク低い
    (穿刺角度が浅く、探り動作が少ないため)
    高め
    (鋭角で深く刺さる可能性がある)
    溶血リスクチューブがあるため、陰圧が緩やかで溶血しにくい陰圧が強く、溶血の可能性がやや高い
    コスト高め(¥20)安価(¥8-¥10)
    適応場面小児、高齢者、細い血管、神経損傷リスクが高い部位での採血に適する健常成人、太い血管、コスト重視の場面で有効

    (参考文献:大西宏明. 採血手技が検査データに与える影響とは? エキスパートナースweb. 2024年7月1日)

    • 注射機材廃棄容器
    • 絆創膏

    *注射機材廃棄容器
    **バイオハザードマークについて
    感染性廃棄物が含まれていることを示す国際的なマーク
    廃棄物の性状に応じて赤、橙、黄の3色に色分けされています

    3. 採血の手順(静脈採血)

    1. 患者確認,ラベルを貼付:氏名・IDを確認し, 適切な採血管にラベルを貼る。
    2. 駆血帯の装着:上腕に巻き、静脈を浮き上がらせる
      *腕が90-85%になる程度の駆血が適切。
      (加藤・森 2009;Sasaki et al. 2012)
      これ以上は動脈血も駆血してしまい静脈まで血液が行かなくなる。
    3. 穿刺部位の選定と消毒
      ・穿刺部位:肘窩の橈側皮静脈が第一選択としてお勧め
      ・消毒:WHOは30秒間拭き、30秒間乾燥させることを推奨している
    4. 穿刺と採血:針を皮膚に対して約15〜30度で挿入
    5. 採血管の交換:必要な採血管を装着
    6. 針の抜去と止血:ガーゼで圧迫しながら針を抜く,5分程度圧迫する
      *標準採血法ガイドライン参照
    7. 後片付け:検体管理を確実に

    右:血管内へ穿刺 中央:翼状針での分注光景 左:直針での分注光景

    4.基礎知識

    血液検査をするときに最も重要なことが血管選び!
    血管選びをするポイントは以下の3点
    ・解剖学的知識
    ・針が入れやすい血管の特徴
    ・狙うべきではない血管

    <血管走行>
    狙うべき静脈は
     ・撓側皮静脈/撓側正中皮静脈
     ・前腕正中皮静脈
     ・尺側皮静脈/尺側正中皮静脈
    がある。
    しかし、下記画像のように尺側は内側前腕皮神経が並走しているため、神経障害を起こすリスクが撓側と比べれば高い。
    *また、多数の神経枝が出ており疼痛を感じやすい。
      (五味 2010;堀ら 2009;木森ら2010;Yamadaet al. 2008)
    そのため、まずは撓側皮静脈、前腕正中皮静脈を最初に探すとよい。

    <血管の特徴>
    ・血管自体に関しては目視ができて、太くて、浅く、弾力のある血管に限る。
    *注意してほしいのは駆血前から見えている血管は動脈硬化などにより血管壁が肥厚しているだけの可能性があるため、注意が必要
    →確認方法としては近位側から遠位側に向かって血管を押し血管を虚脱させる。その後すぐに血管が再度太くなれば血流が豊富であるとわかる。
    **距離2.1mm未満で血管断面積が10.2mm2以上の場合穿刺しやすい傾向にあると報告がある。
    (原明子ほか.女子大学生の採血失敗経験と血管特性.J Jpn Nurs Art Sci.2019;18:133-138.)
    ・血管の可動性を確認する:穿刺前に血管を左右に動かして可動性がある場合、穿刺した際に血管が逃げる可能性がある。
    ・Y字を探す。(結構大事!!)
    血管を穿刺する際にどうしても血管が動いてしまう。しかし、Y字では左右が固定されているため動くことがない。


    <狙うべきではない血管>
    臨床検査医学会では下記を推奨している。

    部位起こりうる合併症や不具合危険度
    肘部の尺側領域
    肘窩遠位部の正中領域深部
    正中神経障害
    手首の撓側橈骨神経障害
    手首の手掌側腱, 動脈の損傷×
    乳房切除側の腕リンパ流うっ滞
    シャント側シャント閉塞×
    重症アトピー皮膚炎や熱傷部位採血困難, 消毒液による刺激
    感染部位血流感染×
    麻痺側神経損傷に気が付かない×
    輸液ルート側輸液が混入し測定値の異常×

    ●:合併症に注意して穿刺 ▲:避けるべきであるが穿刺に注意すれば可能 ×:穿刺不可

    5. よくある失敗と対処法

    • 血液が引けない:血管内に留置できていない。針の角度や位置を微調整。(血管壁内にある可能性もある)駆血帯の再調整も有効。
    • 一度血液が引けたのに体内に逆流してしまった:血管壁を貫通してしまったことにより毛細管現象が働かなくなった。
      →少し針を戻す。
      *経験上貫通した穴から血液が体内に漏れて腫れることが多い
      →そうなったらすぐに針を抜き、圧迫止血を行う。
    • 血管が見えない:温罨法や手を下げるなどで静脈を浮かせる。
    • 患者が緊張している:交感神経が働き血管が収縮してしまうので声かけや深呼吸を促す。

    6. 安全管理と感染対策

    • 針刺し事故防止のため、使用済み針は即廃棄
    • 手袋着用と手指衛生の徹底
    • 採血管の取り違え防止に、ラベル確認を習慣化

    7.想定外の対応について

    • 穿刺部が腫れた
      →圧迫止血を行う。また、すぐに穿刺部より中枢で再度駆血すると穿刺した血管から血液が漏れて腫れがひどくなる。
      →もう一回採血する場合は末梢側or対側の腕で行う。
    • 針刺しをしてしまった
      →まずは大量の流水で洗い流す。
      *石鹸も有用。アルコール綿などは有用性が証明されていない。
      (安松隆治. 血液・体液曝露事故(針刺し事故)への対応. 耳鼻と臨床. 2015;61(2):72–74. )
      →すぐに院内ルールに則り行動する。
    • 動脈を誤穿刺した
      →そのまま血液が取れるなら採血を行ってもよいと筆者は考える。
      *重要なのはその後の圧迫時間!!
      厚生労働省は30分と記載があるが、様々な文献や経験的に5-10分が妥当かと考える。
    • 気分不快や意識消失が起こった
      →迷走神経反射の可能性が高く、採血を中断し仰臥位,下肢挙上させる。
    • しびれがのこる
      →別で詳しく説明する予定ですが、神経内科にコンサルトをお勧めします。