🔬 RAA系の進化的背景と基本構造
- 進化的獲得:海から陸への進化過程で、Na保持と血圧維持のために獲得されたホメオスタシス機構
- レニン:腎灌流圧低下・尿中Cl低下・交感神経刺激により分泌 → アンジオテンシノーゲンをAng Iに変換
- ACE:肺血管内皮細胞に存在 → Ang IをAng IIに変換

この図が最重要!!
🧬 Angiotensin IIの受容体別作用
<受容体:AT₁R(主作用)とAT₂R(修復・保護)とAngiotensin (1-7)>
- AT₁RはAT₂Rの10〜100倍発現
- 高血圧・糖尿病・慢性炎症でAT₁過剰活性が起こる
AT₁R:病態促進型
| 分類 | 代表的作用 | 臨床的影響 |
|---|---|---|
| 血管系 | 血管収縮 → 血圧上昇 | 高血圧、動脈硬化 |
| 腎臓 | Na・水再吸収促進 | 浮腫、体液貯留 |
| 副腎 | アルドステロン分泌促進 | Na保持・K排泄 |
| 心血管 | 平滑筋・線維芽細胞増殖 | 心肥大・血管肥厚 |
| 炎症 | ROS産生(NADPHオキシダーゼ) | 内皮障害、動脈硬化 |
| 神経 | ノルアドレナリン遊離促進 | 交感神経亢進 |
AT₂R:保護・修復型
| 分類 | 代表的作用 | 生理的意義 |
|---|---|---|
| 血管系 | 血管拡張(NO・ブラジキニン) | 血圧低下 |
| 細胞 | 増殖抑制・抗線維化 | 組織修復 |
| 酸化ストレス | 抗酸化作用 | 内皮保護 |
| 神経 | 成長抑制・再生促進 | 神経保護 |
Angiotensin (1-7) / Mas受容体軸(研究段階)
| 作用領域 | 主な所見 |
|---|---|
| 血管・代謝 | 血管拡張・抗炎症・抗線維化 |
| 抗血栓 | 血小板からNO放出 → 血栓抑制 |
| 心筋保護 | Ang IIによる酸化ストレス抑制 |
| 代謝 | インスリン感受性改善・脂質合成抑制 |
| 腎保護 | 炎症・線維化マーカー低下 |
💊 ARB薬剤比較(主に肝排泄)
・ARBはAT1を選択的に阻害する→AT2の作用を相対的に亢進させる
| 薬剤名 | 降圧力 | 半減期 | 特性 | 臨床的利益 |
|---|---|---|---|---|
| アジルサルタン | 特に強力 | 約12h | 非競合・インバースアゴニスト | 透析可・インスリン抵抗性改善 |
| オルメサルタン | 強力 | 約7.5h | 非競合・インバースアゴニスト | アルドステロン抑制・即効性 |
| テルミサルタン | 中等度 | 約20h | 非競合型 PPARγ活性・脂溶性高 | 糖代謝改善 |
| カンデサルタン | 中等度 | 約20h | 非競合型 インバースアゴニスト 受容体解離遅い | 心不全予後改善・抗血栓作用 |
| イベルサルタン | 中等度 | 約13h | 非競合型 インバースアゴニスト CYP2C9代謝 | 相互作用少・エナラプリル同等 |
| バルサルタン | やや弱め | 約4–6h | 非競合型 インバースアゴニスト ARNI構成薬 | 心不全に有用・AT₁選択性高 |
| ロサルタン | 弱め | 約2–4h | 競合型 | 尿酸排泄促進・TXA₂抑制・糖尿病性腎症適応 |
- インバースアゴニスト:アンジオテンシⅡ非依存性のAT1受容体活性も含めて阻害することができる
→臓器保護作用がある - PPARγ活性:インスリン感受性や細胞の分化,増殖,炎症,免疫応答に関与
→臓器保護作用の可能性 - 低血糖の原因になることもある(アンジオテンシン1-7の相対的作用亢進による)
- ロサルタン:
・弱い尿酸排泄促進作用がある(尿酸再吸収阻害)
*ユリノームと作用機序は同じ
・トロンボキサンA2抑制効果あり
→アレルギー反応や血小板凝集を抑制
💊 ACE-I薬剤比較(腎排泄性)
・ACE-IはACEを阻害してアンジオテンシンⅡの産生を抑制する
+ブラジキニン分解抑制により血管を弛緩させる
| 薬剤名 | 降圧力 | 半減期 | 特性 | 臨床的利益 |
|---|---|---|---|---|
| エナラプリル | 中等度 | 約14h | プロドラッグ | 心不全・小児適応あり |
| イミダプリル | 中等度 | 約8h | 空咳やや多め | 糖尿病性腎症適応 |
| テモカプリル | 中等度 | 約22h | 肝・腎排泄型 | |
| ペリンドプリル | 強力 | 約57h | 心血管イベント抑制 | |
| カプトプリル | 弱め | 約2h | 活性型・1日3回 | 急性心筋梗塞後早期投与 |
| トランドラプリル | 中等度 | 約30h | プロドラッグ | 左室機能低下例に有効 |
⚠️ ACE-Iの副作用と注意点
空咳(ブラジキニンの蓄積)
- 発生率は7.7%-17.5%
- ブラジキニン蓄積→c-fiberを刺激
→軸索反射によりサブスタンスP, ニューロキニンAなどが遊離
→気道局所で増加し咳嗽を起こす - 飲み始めた初期-数か月以内に発症
- 2-3か月で消失(空咳で処方変更は不要)
- 非喫煙者の女性に多く, 夕方から夜間に多い
- 高齢者の誤嚥性肺炎予防に使うことがある
高カリウム血症
- アルドステロン分泌抑制によりK蓄積
- カリウム保持性利尿薬と併用で起きやすい
- 腎疾患(腎炎やネフローゼ症候群)や尿路感染症時の使用で起こりやすい
- 使用開始後3か月以内が最多
血管神経性浮腫
- ブラジキニン蓄積→血管透過性亢進による
参考文献
- 霧島記念病院. 降圧薬の使い分けと注意点. 2023年4月.
https://kirishima-mc.jp/data/wp-content/uploads/2023/04/4fec1d886fad5de4fc9ef72f0878bec8.pdf - 高の原中央病院. 降圧薬の特徴と使い分け. 2016年9月.
https://www.takanohara-ch.or.jp/wordpress/wp-content/uploads/2016/10/di201609.pdf - 辛島裕士. ARB/ACE阻害薬の作用機序と周術期使用に関する考察. 日臨麻会誌. 2020;40(7):634–641.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsca/40/7/40_634/_pdf - 川口恵一, 佐藤和夫, 田中正敏, 他. ACE阻害薬使用による高カリウム血症・血中カリウム上昇の関連要因の検討. 医薬品安全性学. 2000;15(2):49–58. https://doi.org/10.3999/jjpe.15.2_49
