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  • 心不全

    心不全

    心不全ガイドラインが2025年改訂されました。
    ガイドラインを紐解きながら心不全について記載させていただきます。

    【定義】

    ■心不全

    「心臓の構造/機能的な異常により, うっ血や心内圧上昇, およびあるいは心拍出量低下や組織低灌流をきたし, 呼吸困難, 浮腫, 倦怠感などの症状や運動耐用能低下を呈する症候群」
    *ナトリウム利尿ペプチドの上昇 or 心臓由来の肺うっ血/体うっ血の客観的所見が心不全の裏付け

    ・患者さんへ伝える場合
    「心臓が悪いために, 息切れやむくみが起こり, だんだん悪くなり, 生命を縮める病気」

    ■心不全増悪

    • 心不全治療に関わらず悪化する心不全症状や心不全徴候
    • 症状変化の有無にかかわらず臨床的他覚*所見の悪化
    • 繰り返す不整脈イベントや悪化する不整脈イベント

     *臨床的他覚
     ・症状変化のない左室駆出率の低下や心拡大
     ・BNP/NT-proBNP上昇
     ・臓器障害としての腎機能障害
     ・心内圧上昇所見
     ・明確な自覚に乏しい運動耐用能やQOLの低下

    ■非代償性心不全

    「症状・徴候や血行動態の悪化をきたし, GDMTの導入及び最適化に加えて, 治療強化が必要な状態」

    • 不安定な血行動態への対応
    • 利尿薬の大幅な増量や静脈注射が必要
    • 予定外受診や入院管理が必要

    この中で緊急の治療が必要なものを急性非代償性心不全(ADHF)と定義

    【病期分類】

    <心不全の経過>

    図:参考文献1より引用

    <ステージ(病期)分類>

    図:参考文献1より引用

    ステージ特徴
    ステージA
    心不全リスク高のみ
    心不全の危険因子*を有するが, 心不全徴候や症状なし
    ステージB
    前心不全
    心不全徴候や症状なし
    +
    ・構造的/機能的異常を伴う心疾患
     (不整脈, 壁異常など)
    ・心内圧上昇所見
     (BNP/NT-proBNP高値**, 心エコー上所見)
    ステージC
    症候性心不全
    ナトリウム利尿ペプチド(BNP/NT-proBNP**)上昇

    心臓由来の肺うっ血/体うっ血の客観的所見
    を現在または過去に認める

    新規心不全, 心不全の改善/維持/増悪でさらに分類される
    ステージD
    治療抵抗性心不全
    治療してもNYHA3度より改善しない状態

    *心不全の危険因子
    ・高血圧
    ・動脈硬化性疾患(脳梗塞や, 末梢動脈/大動脈疾患, 壁運動異常のない冠動脈疾患など)
    ・糖尿病
    ・CKD
    ・メタボリックシンドロームと肥満
    ・心毒性物質の暴露
    ・心筋症の遺伝子や家族歴を有する
    **BNP>35pg/mL, NT-proBNP>125pg/mL

    【左室駆出率(LVEF)による分類】

    ステージLVEF
    LVEFの低下した心不全
    HFrEF
    40%以下の状態
    LVEFの軽度低下した心不全
    HFmrEF
    41-49%の状態
    LVEFの保たれた心不全
    HFpEF
    50%以上の状態*
    LVEFの改善した心不全
    HFimpEF**
    初回評価で40%以下かつ経過で
    10%以上改善し40%を超えたもの

    *EF50%-70%:HFnEF, EF70%-HFsnEFと表現する試みがある
    HFsnEFは予後が悪いことが示唆されている
    **10%以上改善しても40%超えなければHFrEF

    <EF>

    • 左心室駆出率(EF)=
      1回拍出量(左室拡張末期容積-左室収縮末期容積)/左室拡張末期容積
    • 心臓の大きさに関係ない収縮能の指標
    • 正常値は55-70%

    <HFrEF>

    • 主要な原因として拡張型心筋症などの心筋症と虚血性心筋症が多い

    <HFpEF>

    • 心筋症, 心膜疾患, 弁膜症, 高心拍出心不全, 心アミロイドーシスなど特定の治療のある原因を持つことがあるため原因検索が大事!
    • ステージCの69%, ステージDの51%を占める
    • 関連のある背景因子:高齢, 高血圧, 心房細動, 冠動脈疾患, 糖尿病, 肥満など

    <HFimpEF>

    • 経時的EFの改善は予後良好因子
    • 注意:改善したから投薬が不要なわけではない!!

    【NYHA分類/INTERMACS分類/身体機能評価】

    • 身体活動能力=運動耐用能+身体機能
    運動耐用能心拍出量の増加と末梢骨格筋の酸素利用能
    身体機能末梢骨格筋を用いた運動能力
    • NIHA心機能分類は症状の出現する具体的な運動強度や身体活動をMETsの換算表で評価する

    METs:安静時の何倍エネルギーを使うか
    ex)平地の歩行を1時間=3METs・時

    図:参考文献1から引用

    <INTERMACS分類>

    ・NYHAⅢ-Ⅳの重症心不全患者の詳細な重症度判定

    図:参考文献5から引用

    <運動耐用能>

    ・6分間歩行:242m以下が予後不良因子

    <身体機能>

    ・SPPB:4点未満は自宅退院困難, 7点未満は退院後イベントリスク高い

    図:参考文献4から引用

    【原因疾患】

    図:参考文献1から引用

    • 1位:虚血性 次点:弁膜症, 不整脈, 高血圧, 心筋症
    • 合併症として糖尿病, 心房細動, 慢性腎不全が多い

    【右心不全】

    前方障害による症状低灌流による全身倦怠感や運動耐容能の低下
    後方障害による症状体うっ血による四肢の浮腫,
    腹部膨満感/早期満腹感, 食欲低下
    徴候頚静脈圧の上昇, 腹水および肝腫大, 胸水貯留,
    著名なS2・右側S3ギャロップ,
    下部胸骨左縁での全収縮期雑音
    (三尖弁閉鎖不全症による)
    • 右室は後負荷の影響を受けやすい
      →原因として左心不全に伴う肺高血圧症が多い
    機序原因
    後負荷の増大左心不全に伴う肺高血圧症
    PE
    肺動脈性肺高血圧症
    慢性肺疾患
    急性肺障害/ARDS
    SAS/肥満低換気症候群
    人工呼吸
    右室流出路狭窄, 右室二腔症
    収縮機能の低下右室梗塞
    SIRSに伴う右室障害
    心筋炎/心筋症
    Ebstein奇形
    前負荷の異常心タンポナーデ
    左右シャント
    三尖弁閉鎖不全, 肺動脈弁閉鎖不全
    カルチノイド症候群
    心膜疾患心タンポナーデ
    収縮性心筋炎
    調律の異常徐脈性不整脈
    頻脈性不整脈

    【診断】

    <問診>

    • 症状
      ・初期は労作時息切れのみが多い
      ・Bendopnea:前屈30秒させ, 息苦しさがでるか評価する
             左房圧上昇による
             →靴ひもを結ぶときに苦しくならないか聞く
    • 既往歴(冠動脈疾患, 高血圧, 糖尿病, 心房細動, 化学療法歴など)
    • 家族歴(遺伝性疾患の有無)
    • 生活歴:水分/塩分摂取過多の有無, 怠薬や過活動

    図:参考文献1から引用

    <身体所見>

    • 左房圧評価
      聴診:左房圧上昇の反映であるⅢ音やⅣ音を確認
      *特にⅢ音は特異度が高い
    • 右房圧評価
      頚静脈怒張:経時的変化を見てうっ血をコントロールする指標になる
      Kussmaul徴候:吸気時に頸動脈が怒張し, 呼気時に低下する
      肝頚静脈逆流:肝臓下正中寄りを圧迫すると頚静脈が怒張する
    https://youtube.com/watch?v=PmmN1vrsIRk%3Fsi%3D1_K-2bqLAiKeu9JU

    出典:André Mansoor YouTube公式

    https://youtube.com/watch?v=JxyECMTEmmc%3Fsi%3DEaIqy0tIei5tyWIj

    出典:AMBOSS: Medical Knowledge Distilled YouTube公式

    • 低拍出による組織灌流低下
      末梢冷感
      脈圧狭小
      Cheyne-Stokes呼吸:浅い呼吸から深い呼吸になり, 再び浅い呼吸になり無呼吸に至るを繰り返す
      *低拍出による循環時間の延長により中枢へのフィードバックが遅くなることが主因
    https://youtube.com/watch?v=VkuxP7iChYY%3Fsi%3DjZ3ew1ilASiCR_le

    出典: semiologiaclinicas YouTube公式

    • 原因推定
      聴診:弁膜症
      手根管症候群や巨舌など:アミロイドーシス
      視力障害, 皮膚結節など:サルコイドーシス
      四肢末梢痛, 低汗症など:ファブリー病
      その他膠原病など

    <血液検査BNP/NT-proBNP>

    • BNPとは左室への伸展刺激によって, 心室から合成, 分泌される
    • うっ血の早期発見やうっ血の治療強化目的に測定する
    • NT-proBNPはBNPの前駆体が分解されて生じるホルモン
      1:1の割合でBNPとともに血中に放出される
    特徴BNPNT-proBNP
    半減期20分と短い120分と長い
    腎機能の影響受けにくい受けやすい
    腎機能低下で上昇*
    検体EDTA血漿血清

    *eGFR 30mL/分/1.73m2未満では特に上昇する

    • カットオフ値:BNP 35pg/mL, NT-proBNP 125pg/mL
    • 陰性的中率が高い(94-98%)ため, 除外に有用

    図:参考文献1より引用

    <胸部Xp>

    • 肺炎などの呼吸器疾患との鑑別が重要
    • 肺うっ血所見を確認する
      *重力の関係で下肺は正常でも認める→上肺の血管拡張が重要
    • 心胸郭比が大きいと予後不良

    図:参考文献1から引用

    <心臓超音波検査>

    ・患者の状態変化や治療開始時期や6か月後(リモデリングが現れる)に行うのがよい


    1,機能評価

    1-1, 左室収縮能の評価:左室駆出率で評価
    1-2,左室拡張能(Diastolic function)の評価
     ・HFrEFでは予後因子,HFpEFでは診断の中核
     ・e’は左室弛緩を示す指標(拡張能を示す基本)
     *正常値は年齢により違う!!
     ・E/A:左室弛緩/左房圧
     →拡張障害/収縮障害がある場合は左房圧の指標として有用
     ・三尖弁逆流最大速度:肺動脈弁狭窄症のない場合に収縮期肺動脈圧を反映
     =左房圧上昇による二次性肺高血圧症を呈する時に左房圧を間接的に反映

    図:参考文献2から引用

    図:参考文献3から改変

    1-3,右室機能
     ・重要な予後因子だが、しっかりした評価基準がない
     ・TAPSE(三尖弁輪収縮期移動距離)は簡易的な指標
      *17mm未満は右室収縮機能障害を示唆

    1-4, 心房機能
     ・HFpEFと非心原性息切れの鑑別に有用な可能性
      *LA reservoir strainが29%以下はHFpEFを疑う
     ・左室機能障害の初期に起こる変化

    2,血行動態の評価

    2-1, 心拍出量

    2-2, 心房細動
     ・測定が難しい.
      →RR間隔が前拍, 前々拍で一定の時に測定するのが有用

    <CT>

    心不全の診断に重要
    ・心拡大
    ・両側性の間質肥厚
    ・両側性胸水
    ・血管径拡大
    ・両側性のすりガラス影

    図:参考文献1から引用

    <MIBG心筋シンチ>

    • 心臓交感神経活性の評価
    • 左室機能の低下, 交感神経活性の亢進に一致して, MIBGのWRが上昇, H/M低下を認める
    • 重症度評価や予後予測に有用

    【予防】

    図:参考文献1から引用

    1, 発症予防(ステージA)
    ・心不全危険因子(高血圧, 糖尿病, CKD, 肥満など)の管理
     <疾患>
     ・高血圧:130/80mmHg以下の管理
     *サイアザイド利尿薬は特に有用
     ・CKD+2型DM:SGLT2阻害薬, GLP-1受容体作動薬を推奨
     <生活>
     ・運動:500-1000METs・分/週以上が理想
     ・食事:野菜中心とした生活
        減塩
        20-30kcal/kg/日,
         タンパク質:1.1g/kg/日以上推奨
        *高齢者は1.2-1.5g/kg/日推奨
     ・禁煙
     ・節酒
    ・構造的/機能的心疾患の発症フォロー=BNPフォロー
     →上昇あればRAS阻害薬やβ遮断薬を積極的に使用!

    2,前心不全(ステージB)
    ・ACE阻害薬, ARB, β遮断薬を積極的に導入する
    *左室駆出率が保たれている場合はエビデンスが乏しい

    【治療】

    図:参考文献1より引用

    <HFrEF>

    • ACE-I/ARB/ARNI, β遮断薬, MRA, SGLT2阻害薬の4剤を併用する
      *許される範囲で用量を増量する
      **筆者は将来的にARNIに切り替えることを想定し, ARBを使う
    • LVEF40%以下で血行動態が安定した際のNYHA分類Ⅱ-Ⅲ患者の第一選択薬はARNIを推奨する
    • β遮断薬は全例入れたい!
      *HR<60拍/分を目標にする(AF非合併例)
      →最大容量でも達成できない場合イバブラジンを使う!
      **COPD合併例ではβ1選択制の高いビソプロロールが優先
    • MRAは軽症から重症まで有効性が示されている
      *高K血症やeGFR<30mL/分/1.73m2では慎重投与
    • SGLT2阻害薬は心不全なら全例
      *フレイル合併でも有用
    • 非ジヒドロピリジン系Ca拮抗薬は禁忌

    <HFpEF>

    • SGLT2阻害薬が主役!!
    • 左室駆出率55-60%まではARNI, ARB, MRAを考慮しても良い
      *ARNIは心血管死や入院イベントを改善させたエビデンスがある(ARBを代替として用いても良い)
      **MRAは非ステロイド型(フィネレノン)はリスク低減のエビデンスがある
    • 併存疾患の検索と治療が重要(併存疾患が多いことが特徴)
      ・高血圧
      ・心房細動
      ・冠動脈疾患
      ・糖尿病
      ・慢性腎臓病
      ・貧血
      ・睡眠時無呼吸症候群
    • 肥満(BMI≧30kg/m2)のHFpEFではセマグルチド(GLP-1)を積極的に使用する

    <HFmrEF>

    • 症候性HFmrEFにはSGLT2阻害薬, ARNIは全例に考慮

    <HFimpEF>

    • HFrEFの治療薬を継続する
      *構造異常は完全に正常化していないため

    <右心不全>

    • 体うっ血に対して利尿薬を使用する
      ・基本ループ利尿薬
      *アゾセミドの方がフロセミドより入院件数が少なかった
      **ループ利尿薬単剤使用は予後不良! 
      ・ループ利尿薬で反応なければバソプレシンV2受容体拮抗薬
      *長期予後は変わらなかった

    <ADHF(急性非代償性心不全)>

    図:参考文献1から引用

    図:参考文献1から引用

    • うっ血がない血圧低下→補液
      うっ血のある血圧低下→ノルアドレナリンで昇圧+ドブタミンで心拍出量↑/組織灌流の改善を試みる
    • うっ血
      評価:
       ・起坐呼吸や頚静脈怒張
       ・心エコー:下大静脈径の拡大, 呼吸性変動の消失, 肝静脈の拡張
      管理
       ・ループ利尿薬の静注
        →1時間の反応尿を確認
        →十分な量が得られれば同量を2-3回/日で至適体液量まで継続
        →維持量の内服に切り替える
       ・肺うっ血:NPPV
       ・うっ血症状に血管拡張薬を考慮
        *血圧が保たれている場合のみ
        **ニコランジルが降圧が過度でなく使いやすい
      利尿薬抵抗性(ループ利尿薬初回用量の2-4倍使用しても尿量少ない)
       ・原因:低心拍出, 低血圧, 貧血, 感染, 低Alb/Na血症など
       ・対応:ループ利尿薬増量*→バソプレシンV2受容体拮抗薬
          *低K血症に注意

    図:参考文献1から引用

    • 頻脈
      AF合併の頻脈の時のみコントロールするメリットがある
      →ランジオロールなどで介入
    • 血液ガス:呼吸不全精査
      酸素投与してもRR>25回/分, SpO2<90%の場合
      →NPPV
      →気管挿管
    • Lac:組織低灌流の評価

    <心房細動>

    • 心不全に合併しやすく, 悪化させやすい
    • rateコントロール
      ・rhythmコントロールより優先
      ・ランジオロール静注から始める
       →無効の場合ジゴキシンを考慮
        *血中濃度測定忘れずに
    • rhythmコントロール
      ・rateコントロール困難や洞調律維持が血行動態や心不全管理に有益の場合に行う
      *rateコントロールのみで症状改善しない場合, 若年者や運動耐用能が高い患者など
      ・心機能低下例ではアミオダロンが1st

    図:参考文献1から引用

    • 抗凝固薬
      ・CHADS2スコア1点以上でDOAC推奨

    <併存疾患>

    • 高血圧:降圧薬を行う
    • CKD:とにかくSGLT2阻害薬
      *eGFR20mL/分/1.73m2以上に限る
      ・HFrEF患者ではMRA, ARNI, β遮断薬を投与
    • 貧血:鉄欠乏性貧血の精査
        →鉄材補充
    • 高カリウム血症
      ・K5.0-5.4mEq/L:カリウム吸着薬を考慮
      ・K5.5-6.6mEq/L:カリウム吸着薬を考慮+RAAS阻害薬減量を考慮
      ・K6.5-mEq/L:緊急治療
    • 低ナトリウム血症
      ・原因:RAAS系の亢進, バソプレシン分泌亢進による水利尿不全による希釈性, 薬剤性
      ・トルバプタンを考慮
    • 糖尿病:SGLT2阻害薬導入.その後糖尿病治療薬を増量していく
    • COPD/喘息:β遮断薬, ACE阻害薬/ARBを投与

    <重症高血圧症による急性心不全>

    • 早期降圧が必要
      →硝酸イソソルビドが早期に血圧を下げた

    <埋め込み型心臓電気デバイス治療(ICD)>

    • 適応:可逆的要因がなく, 血行動態の破綻をきたした持続性VT/VF, 心停止からの蘇生後

    <心臓再同期療法>

    • 心室の同期障害(左右心室の伝わるタイムラグがあり, 均等に心室が収縮しない)に対してペースメーカーで電気信号の順序を整えることでポンプ機能を補助する治療

    図:参考文献1より引用
    ClassⅠは推奨, Ⅱa,bは考慮してもよい

    【追加知識】

    <妊婦>

    • ACE阻害薬, ARB, ARNI, SGLT2阻害薬, イバブラジンは禁忌
    • β遮断薬は胎児発育不全や新生児低血糖を惹起するため慎重投与
    • 妊娠中はMRAくらい
      増悪時にループ利尿薬やhANPで治療をする

    <肥大型心筋症>

    • 定義:(1)左室ないしは右室心筋の肥大と(2)心肥大に基づく左室拡張能低下を特徴とする疾患群

    図:参考文献1より引用

    • 2次性心筋症
      ・ALアミロイドーシス:M蛋白, アミロイドPET
      *M蛋白陽性が診断基準の一つ
      ・ファブリー病:酵素活性測定
      ・ミトコンドリア病:乳酸, ピルビン酸, カルニチンなどの測定
    • 治療:まずβ遮断薬

    <心アミロイドーシス>

    • 病態:心臓の間質にアミロイド線維が沈着する
    • red-flag所見
      ・手根管症候群/脊柱管狭窄症の既往
      ・心電図:低電位, 前胸部誘導R波増高不良
      ・心エコー:左室肥大, ASなど
    • 検査:M蛋白(血液, 尿), アミロイドPET

    <心臓サルコイドーシス>

    • 臨床像:左室機能障害による心不全, AVB, 致死性心室性不整脈
    • 神経所見
      ・中枢神経
       ・実質内肉芽腫性病変
       ・髄膜炎
       ・水頭症
       ・白質脳症
      ・末梢神経障害
    • 特異的な検査所見
      ・両側肺門リンパ節腫脹
      ・血清ACE, リゾチーム高値
      ・siL-2R高値
      ・PETによる集簇
      ・BAL検査でのリンパ球比率上昇, CD4/CD8>3.5

    【参考文献】

    1,日本循環器学会,日本心不全学会.急性・慢性心不全診療ガイドライン(2025年改訂版)
    2,Nagueh SF, Smiseth OA, Appleton CP, et al. Recommendations for the Evaluation of Left Ventricular Diastolic Function by Echocardiography: An Update from the American Society of Echocardiography and the European Association of Cardiovascular Imaging. J Am Soc Echocardiogr 2016; 29: 277-314. PMID: 27037982
    3,Makani H, Bangalore S, Romero J, Waheed A, Usman MS, Sosland R, et al. Calcium channel blocker–related peripheral edema: Can it be resolved? Am J Med. 2017 Jul;130(7):747–753. doi:10.1016/j.amjmed.2017.03.045. PMID: 28408024.
    4,Yamada N. Short Physical Performance Battery (SPPB): ICC, mortality, discharge. Yamanopt Blog. Available from: https://yamanopt.com/short-physical-performance-battery-icc-mortality-discharge/ [Accessed 22 Nov 2025].
    5,東栄医用株式会社. INTERMACS/J-MACS profiles. Cardio Terms – Test, Exam, Diagnosis. Available from: https://med.toaeiyo.co.jp/contents/cardio-terms/test-exam-diagnosis/images/4-95intermacs-j-macs-profiles.png [Accessed 22 Nov 2025].

  • サイアザイド系利尿薬

    サイアザイド系利尿薬

    サイアザイド系利尿薬はガイドラインで推奨されていますが、あまり使用経験が少ない薬剤かと思います。
    しかし、サイアザイド系利尿薬はすごく有用な薬剤ですので是非使ってみてください

    知識

    ・2025年ガイドラインから体液貯留患者での使用が積極的使用になった!

    ・浮腫が改善した後の定常状態を維持するために使用

    機序

    ・初期:遠位尿細管のNa/Cl共輸送体を阻害する

     →体液量減少により血圧を下げる

    ・長期:細胞内に取り込まれるNa濃度が低下し, 遠位尿細管に存在するNa+/Ca+交換体が活性化

     →Caが血管側に排出され, 血液中のCa濃度が上昇する

     →細胞膜上のCa感受性K+チャネルが活性化し, K+が細胞外に流出し膜が過分極する

     →細胞外のK+上昇により電位依存型L型Caチャネルの開口抑制

     →血管平滑筋が弛緩する

    ・遠位尿細管(Na7%程度の再吸収しかしない)に作用するため, GFRが低下するとほとんど利尿作用が得られない

     →GFR<30, Cr>2ではループ利尿薬を使うしかない

    ループ利尿薬との違い

    ループ利尿薬はNa+,K+,Cl-共輸送体を阻害することで電気勾配を作るROMKチャネルを間接的に抑制する
    →電気勾配で細胞内に取り込まれていたCa+,Mg+の再吸収を抑制する

    薬剤

    ・サイアザイド系利尿薬(ヒドロクロロチアジド, トリクロルメチアジド)

    ・サイアザイド類似薬(日本ではナトリックスのみ)

    の2種類。

    しかし、使用をお勧めするのはサイアザイド類似薬!!
    理由は2つ

    ・血圧がサイアザイド利尿薬より下がる
    ・心血管イベントや脳卒中の予防エビデンスが豊富

    (1982;122:1010-30)

    (HYVET試験)

    使い方

    ・標準の半量で使う。

    半量で降圧効果が得られており、副作用の発生頻度が低い

    (BMJ. 2003 Jun 28;326(7404):1427)

    副作用

    ・低Na血症

    ・低K血症

    ・高Ca血症

    *骨粗鬆症の予防に使われることもある

  • ARB/ACE-I

    ARB/ACE-I

    🔬 RAA系の進化的背景と基本構造

    • 進化的獲得:海から陸への進化過程で、Na保持と血圧維持のために獲得されたホメオスタシス機構
    • レニン:腎灌流圧低下・尿中Cl低下・交感神経刺激により分泌 → アンジオテンシノーゲンをAng Iに変換
    • ACE:肺血管内皮細胞に存在 → Ang IをAng IIに変換

    この図が最重要!!


    🧬 Angiotensin IIの受容体別作用

    <受容体:AT₁R(主作用)とAT₂R(修復・保護)とAngiotensin (1-7)>

    • AT₁RはAT₂Rの10〜100倍発現
    • 高血圧・糖尿病・慢性炎症でAT₁過剰活性が起こる

    AT₁R:病態促進型

    分類代表的作用臨床的影響
    血管系血管収縮 → 血圧上昇高血圧、動脈硬化
    腎臓Na・水再吸収促進浮腫、体液貯留
    副腎アルドステロン分泌促進Na保持・K排泄
    心血管平滑筋・線維芽細胞増殖心肥大・血管肥厚
    炎症ROS産生(NADPHオキシダーゼ)内皮障害、動脈硬化
    神経ノルアドレナリン遊離促進交感神経亢進

    AT₂R:保護・修復型

    分類代表的作用生理的意義
    血管系血管拡張(NO・ブラジキニン)血圧低下
    細胞増殖抑制・抗線維化組織修復
    酸化ストレス抗酸化作用内皮保護
    神経成長抑制・再生促進神経保護

    Angiotensin (1-7) / Mas受容体軸(研究段階)

    作用領域主な所見
    血管・代謝血管拡張・抗炎症・抗線維化
    抗血栓血小板からNO放出 → 血栓抑制
    心筋保護Ang IIによる酸化ストレス抑制
    代謝インスリン感受性改善・脂質合成抑制
    腎保護炎症・線維化マーカー低下

    💊 ARB薬剤比較(主に肝排泄)

    ・ARBはAT1を選択的に阻害する→AT2の作用を相対的に亢進させる

    薬剤名降圧力半減期特性臨床的利益
    アジルサルタン特に強力約12h非競合・インバースアゴニスト透析可・インスリン抵抗性改善
    オルメサルタン強力約7.5h非競合・インバースアゴニストアルドステロン抑制・即効性
    テルミサルタン中等度約20h非競合型
    PPARγ活性・脂溶性高
    糖代謝改善
    カンデサルタン中等度約20h非競合型
    インバースアゴニスト
    受容体解離遅い
    心不全予後改善・抗血栓作用
    イベルサルタン中等度約13h非競合型
    インバースアゴニスト
    CYP2C9代謝
    相互作用少・エナラプリル同等
    バルサルタンやや弱め約4–6h非競合型
    インバースアゴニスト
    ARNI構成薬
    心不全に有用・AT₁選択性高
    ロサルタン弱め約2–4h競合型尿酸排泄促進・TXA₂抑制・糖尿病性腎症適応
    • インバースアゴニスト:アンジオテンシⅡ非依存性のAT1受容体活性も含めて阻害することができる     
      →臓器保護作用がある
    • PPARγ活性:インスリン感受性や細胞の分化,増殖,炎症,免疫応答に関与
      →臓器保護作用の可能性
    • 低血糖の原因になることもある(アンジオテンシン1-7の相対的作用亢進による)
    • ロサルタン:
      ・弱い尿酸排泄促進作用がある(尿酸再吸収阻害)
       *ユリノームと作用機序は同じ
      ・トロンボキサンA2抑制効果あり
       →アレルギー反応や血小板凝集を抑制 

    💊 ACE-I薬剤比較(腎排泄性)

    ・ACE-IはACEを阻害してアンジオテンシンⅡの産生を抑制する
     +ブラジキニン分解抑制により血管を弛緩させる

    薬剤名降圧力半減期特性臨床的利益
    エナラプリル中等度約14hプロドラッグ心不全・小児適応あり
    イミダプリル中等度約8h空咳やや多め糖尿病性腎症適応
    テモカプリル中等度約22h肝・腎排泄型
    ペリンドプリル強力約57h心血管イベント抑制
    カプトプリル弱め約2h活性型・1日3回急性心筋梗塞後早期投与
    トランドラプリル中等度約30hプロドラッグ左室機能低下例に有効

    ⚠️ ACE-Iの副作用と注意点

    空咳(ブラジキニンの蓄積)

    • 発生率は7.7%-17.5%
    • ブラジキニン蓄積→c-fiberを刺激
      →軸索反射によりサブスタンスP, ニューロキニンAなどが遊離
      →気道局所で増加し咳嗽を起こす
    • 飲み始めた初期-数か月以内に発症
    • 2-3か月で消失(空咳で処方変更は不要)
    • 非喫煙者の女性に多く, 夕方から夜間に多い
    • 高齢者の誤嚥性肺炎予防に使うことがある

    高カリウム血症

    • アルドステロン分泌抑制によりK蓄積
    • カリウム保持性利尿薬と併用で起きやすい
    • 腎疾患(腎炎やネフローゼ症候群)や尿路感染症時の使用で起こりやすい
    • 使用開始後3か月以内が最多

    血管神経性浮腫

    • ブラジキニン蓄積→血管透過性亢進による

    参考文献

    1. 霧島記念病院. 降圧薬の使い分けと注意点. 2023年4月.
      https://kirishima-mc.jp/data/wp-content/uploads/2023/04/4fec1d886fad5de4fc9ef72f0878bec8.pdf
    2. 高の原中央病院. 降圧薬の特徴と使い分け. 2016年9月.
      https://www.takanohara-ch.or.jp/wordpress/wp-content/uploads/2016/10/di201609.pdf
    3. 辛島裕士. ARB/ACE阻害薬の作用機序と周術期使用に関する考察. 日臨麻会誌. 2020;40(7):634–641.
      https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsca/40/7/40_634/_pdf
    4. 川口恵一, 佐藤和夫, 田中正敏, 他. ACE阻害薬使用による高カリウム血症・血中カリウム上昇の関連要因の検討. 医薬品安全性学. 2000;15(2):49–58. https://doi.org/10.3999/jjpe.15.2_49
  • Ca拮抗薬

    Ca拮抗薬

    ■長時間作用型ジヒドロピリジン系Ca拮抗薬

    ●機序

    電位依存性Caチャネルには以下の種類がある:

    L型チャネル

    • 局在:血管平滑筋(末梢血管、脳血管、冠動脈、腎動脈)、洞結節、房室結節
    • 作用
      • 血管平滑筋のL型チャネル阻害 → 血管弛緩 → 末梢血管抵抗↓ → 血圧低下
      • 反射性頻脈による心拍数↑
        ※ジヒドロピリジン系はL型選択性が高く、心筋への直接作用が少ないため反射性頻脈が起こりやすい
      • 洞結節・房室結節での阻害 → 心拍数↓(HR低下)

    T型チャネル

    • 局在:洞結節、腎臓の輸入・輸出細動脈、副腎皮質
    • 作用
      • 洞結節での遮断 → HR低下
      • 腎細動脈の拡張 → 糸球体内圧↓ → 尿蛋白減少 → 腎保護作用
      • 副腎皮質での遮断 → アルドステロン分泌抑制 → 心腎系への負荷軽減

    N型チャネル

    • 局在:交感神経終末、腎臓の輸出細動脈
    • 作用
      • 交感神経終末での遮断 → HR↓、BP↓
        ※反射性頻脈が起こりにくい
      • 腎細動脈の拡張 → 糸球体内圧↓ → 尿蛋白減少 → 腎保護作用

    ●各薬剤の特徴

    アムロジピン

    • 作用発現は緩徐かつ持続的
    • 血管選択性が高い
    • 洞結節などへの作用は弱く、HR低下は起こりにくい

    シルニジピン

    • L型抑制:アムロジピンと同様
    • N型抑制:交感神経抑制 → ストレス時の昇圧を防ぐ
    • 末梢血管・脳血管への選択性が高い

    ニカルジピン(まんべんなく作用)

    <作用>

    • 末梢血管拡張 → 血圧降下
    • 脳血管拡張 → 脳血流↑ → 脳虚血予防に有用
    • 冠血流↑ → 心筋酸素供給↑ → 虚血性心疾患の補助に有用
    • 反射性頻脈による心拍数↑
    • 後負荷↓ → 心拍出量↑
    • 冠血流↑・後負荷↓ → 心筋保護作用
    • 腎血流↑ → Na排泄↑ → 軽度の利尿作用
    • 血管拡張によるせん断応力↓ → NO・PGI₂産生↑ → 血小板活性化抑制

    <使い方>

    • 5A, 50mL(0.1γ=0.6ml/h)組成
      *50kg換算
    投与速度薬効
    0.2-2r冠動脈拡張
    0.6r-0.8r静脈拡張(前負荷軽減)
    3-10r動脈拡張(後負荷軽減)

    ニフェジピン(アダラート)

    • 血管拡張作用が最強 → 高血圧に有用
    • 反射性頻脈をきたしやすく心負荷↑のリスク → 徐放剤が主流

    ベニジピン

    • 血管平滑筋選択性:心筋よりも血管への作用が強く、降圧効果が高い
    • 腎臓選択性:T型遮断 → 腎血流改善・尿蛋白減少
    • 交感神経抑制:N型遮断 → ストレス性高血圧にも有効
    • 冠攣縮性狭心症に有効 → 冠動脈の攣縮抑制 → 予後改善効果あり

    ●非ジヒドロピリジン系Ca拮抗薬

    ジルチアゼム(ヘルベッサー)

    <作用>

    • 全身抵抗血管に対する血管拡張が強い
    • 上室性頻脈性不整脈抑制作用
    • 冠血管拡張作用 → 心筋虚血に有効
    • 心筋保護作用あり

    <使い方>

    • 2V+生食/5%ブドウ糖液50mL(1r=1.5L/h)
      *50kg換算
    投与速度薬効
    0.3-1rspasm予防
    1-5rrate control
    5-15r降圧

    ベラパミル(ワソラン)

    • フェニルアルキルアミル系:心臓選択性が高く、細動脈選択性が弱い
    • PVC、PAF、AFLなどの頻脈性不整脈に適応
    • 徐脈化によるHRコントロール
    • 冠動脈攣縮にも有効
    • ジルチアゼムよりさらに心臓選択性が高く、降圧作用はほぼなくHR↓が主作用

    ■参考文献

    1. 徳山医師会病院 薬剤部. カルシウム拮抗薬の特徴と使い分け.
      http://hospital.tokuyamaishikai.com/wp-content/uploads/2021/11/131e5ace18d4079a3f491b46f5fb63bf.pdf
    2. 山口, 直人. Ca拮抗薬の薬理と臨床応用. 日本臨床麻酔学会誌, 73(1), 12–18.
      https://www.jstage.jst.go.jp/article/numa/73/1/73_12/_pdf
    3. 循環器薬剤研究会. 循環器薬剤ハンドアウト 第3回.
      https://www.eonet.ne.jp/~jyunkankiyakuzai/handout/3.pdf
    4. 東京医科大学八王子医療センター 救命救急センター. 循環作動薬などのγ投与表.
      https://qq8oji.com/pg-report/973