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  • ヘパリン

    ヘパリン

    【機序】

    <凝固系>

    ・アンチトロンビン(以下AT)はⅩa因子, トロンビンを阻害し抗凝固活性を発揮する.

    引用:全国血液センター協議会. 血液用語事典「血漿分画製剤」. http://www.ketsukyo.or.jp/glossary/ka05.html(2025年11月8日アクセス

    ・ヘパリンはアンチトロンビンに結合することで, アンチトロンビンの抗凝固活性を数千倍に高める
    →Ⅹa因子阻害作用:ヘパリンがATに結合するのみで作用発現
     トロンビン阻害作用:トロンビンとAT双方にヘパリンが結合する必要がある

    Hirsh J, Warkentin TE, Raschke R, et al. Heparin and low-molecular-weight heparin: mechanisms of action, pharmacokinetics, dosing, monitoring, efficacy, and safety. Chest. 1998;114(5 Suppl):489S–510S.
    図2「Catalysis of antithrombin-mediated inactivation of thrombin or factor Xa by UFH or LMWH」より引用。ResearchGateより取得。
    https://www.researchgate.net/figure/Catalysis-of-antithrombin-mediated-inactivation-of-thrombin-or-factor-Xa-by-UFH-or-LMWH_fig2_40453331

    <その他作用>

    【種類】

    <未分画ヘパリン>

    • 分子量5000-20000のムコ多糖
    • 半減期:45-60分

    <低分子ヘパリン>

    • 分子量4000-6000と未分画ヘパリンに比べ小さい
      →トロンビンまで囲えないため, Ⅹa因子阻害のみ行う
    • プロタミンで最大60%程度しか回復しない
    • 半減期:2-4時間と未分画ヘパリンより長い
      *抗Ⅹa作用は投与後12時間でも持続する

    <ダナパロイド>

    • 低分子量(平均6000)のへパラン硫酸を主成分
    • DICの本邦では適応
      *海外ではヘパリン起因性血小板減少症発生時の代替薬としても使用
    • 抗第Ⅹa因子/トロンビン活性比が約20:1と非常に高い
    • 半減期20時間と長い

    <フォンダパリヌクス>

    • 未分画ヘパリンの最小有効単位であるAT結合部位を化学合成した抗凝固薬
      →第Ⅹa因子阻害作用のみ増強
    • 投与後約2時間で最高血中濃度に達する

    【管理】

    • APTT1.5-2倍で管理をする
    • APTTを1.5倍に延長するために35000単位/日以上を要するものをヘパリン抵抗性と判断する
      原因:CRP, 血漿タンパク, 抗ヒスタミン薬などによるヘパリンの中和やATの低下

    【HIT】

    <機序>

    引用:日本血栓止血学会. 血栓止血分野の最新トピックス:プロコアグラント活性に富むマイクロパーティクル. お役立ちシリーズ. 2022年8月号(第19回)

    • ヘパリンとPF4の多分子複合体を認識するIgGクラスの血小板活性化抗体(抗PF4/ヘパリン複合体抗体:HIT抗体)の一過性産生が原因
    • PF4:血小板α顆粒中に存在し, 血小板が活性化されると放出され, 血管内皮細胞表面でアンチトロンビンに置換されることで局所的に血栓傾向を促進する.
    • ヘパリンは血管内皮細胞表面よりPF4との親和性が強い
      →ヘパリン存在下では, PF4は血管内皮細胞から血中に移動し, 免疫原性PF4/ヘパリン複合体を形成する.
    • ヘパリンとPF4が1:1-2で存在する時, PF4に構造変化が生じ, 抗原決定基が露出し, marginal zone B cellからHIT抗体が産生される.

    1, HIT抗体+PF4/ヘパリン複合体は血小板膜FcγRⅡA受容体に結合し血小板を活性化させる
    →血小板からプロコアグラント活性に富むマイクロパーティクルが放出される
    *プロコアグラント活性に富むマイクロパーティクル:凝固因子(特に第Ⅹa因子やトロンビン)の活性化する能力を有する膜小胞
    →トロンビンの過剰産生+消耗性血小板減少を起こす

    2, HIT抗体+PF4/ヘパリン複合体は単球のFcγRⅡA受容体や血管内皮細胞に結合することで組織因子の発現量を増加させる
    →トロンビンのさらなる過剰産生を促進する

    3, 別で, HIT抗体はThrombomodulin上でのPF4による活性化ProteinC産生を抑制する.
    →トロンビン産生を助長させる
    ProteinC:ⅧaとⅤa分解を減少させ, トロンビン産生を抑制する

    <知識>

    • 血栓症を伴うHITはHIT-T(HIT with hrombosis)と呼ばれる
    • 好発時期はヘパリン投与後5-14日
    • 死亡率は20%にも及ぶ
    • 未分画ヘパリンによる免疫学的測定法陽性率29.8%に対して,機能的測定法は9.9%,HIT発症は4.8%, HIT-T発症は3.6%だった.
      =HIT抗体陽性であっても, 臨床的にHIT, HIT-Tを起こすのはごく一部.
      (氷山の一角モデル)

    引用:日本血栓止血学会. 血栓止血分野の最新トピックス:プロコアグラント活性に富むマイクロパーティクル. お役立ちシリーズ. 2022年8月号(第19回)

    発症リスク未分画ヘパリン低分子ヘパリンフォンダパリヌクス
    高リスク
    (1%以上)
    心臓手術後
    人工関節置換術後
    受傷外傷患者
    冠動脈疾患
    脳血管疾患
    透析導入期
    中リスク
    (0.1-1%)
    内科患者
    透析維持期
    内科患者
    重症外傷
    人工関節置換術後
    低リスク
    (0.1%未満)
    産科患者産科患者すべての患者

    <症状>

    ■血小板減少症

    • HIT患者の約95%に認める
    • 発症前の30-50%まで低下を認めるが, 20×103/μL未満の高度の減少は少ない.
      *20×103/μL未満になると自発性の出血の可能性が出てくる
      →HITでは出血傾向になるのは稀
    • DICに発展しうることもあるため注意
      *20×103/μL未満, 血栓症, 出血症状を伴ったら注意!!

    ■動静脈血栓症

    • トロンビンの過剰産生が引き金となるため, 静脈血栓症の方は多い.
    • 血液透析などの腎代替療法では, 血液回路内の凝固がHITを疑う所見の一つ

    <分類>

    <診断>

    4Tsスコア

    *自然発症型ではスコアが過小評価されるため注意が必要

    引用:日本血栓止血学会. 血栓止血分野の最新トピックス:プロコアグラント活性に富むマイクロパーティクル. お役立ちシリーズ. 2022年8月号(第19回)

    <治療>

    • ヘパリンの中止
      +アルガトロバン投与, 経口抗凝固薬への切り替えを目指す
      経口抗凝固薬は基本的に3か月程度継続する
      ・DOACへの切り替え方
       アルガトロバン投与後血小板回復後に切り替える
      ・ワーファリン
       DOAC投与できない患者に対して血小板が回復した後切り替える
       PT-INRが安定(2.5以上)するまではアルガトロバンを併用すること!
       PT-INRが2未満になればアルガトロバンを再開する.
      *ワーファリン:
      ・プロテインC・S(抗凝固因子)を先に抑制し、トロンビン生成抑制が遅れるため、初期には凝固亢進状態になる。
      ・プロテインC欠乏による皮膚壊死などを引き起こす.
      ・抗凝固効果は2-3日かけて発現するため急性期には向かない
    • 予防的血小板輸血はしない
      (HIT抗体の産生促進になるため)
      *出血による重篤な転帰をとる可能性がある場合や外科的介入が必要な場合は考慮


    参考文献

    • 日本小児科学会. 小児科診療における指針(2007–2008年版). 日本小児科学会. https://www.jspc.gr.jp/Contents/public/pdf/shi-guide07_08.pdf
    • 森下英理子. 出血傾向の鑑別診断. 日本内科学会雑誌. 2020;109(7):1340–1346
    • 日本血栓止血学会. 血栓止血分野の最新トピックス:プロコアグラント活性に富むマイクロパーティクル. お役立ちシリーズ. 2022年8月号(第19回)