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  • FND 機能性神経障害

    FND 機能性神経障害

    【概念】

    神経症状が他のいかなる疾患でも説明できない状態のことを指す。
    注意点としては意図的に神経症状を呈しているわけではない

    【歴史】

    ・[ヒステリー]という用語は紀元前5世紀ごろに子宮を意味するギリシャ語からヒポクラテスが命名した
    *女性の様々な身体的・精神的な症状の原因を、子宮が体内でさまようことだと考えていたため

    ・Babinskiは, 器質性麻痺とヒステリー性麻痺を鑑別するためにBabinski徴候を見出した

    【知識】

    ・様々な検査やdoctor shoppingを繰り返すと, 症状が固定し, 難治例になる可能性もある

    ・女性に多い

    ・左側に多い

    【症状】

    <運動麻痺>

    ・身体イメージにある運動の総体が麻痺する

    (股関節外転なら外転ができなくなる)

    つまり, 協働運動全体の障害が起こる
    *関節運動の際, 主働筋以外に様々な協働筋が動いでいる
    **構造性の障害では一部の筋のみの障害が普通に起こる
    外転など動きは他の筋肉を使い大なり小なりできる

    ・Give-way weakness:一瞬力が入り, その後カクカクと力が抜ける
    *Guillan-Barre症候群やCIDPでも起こりうる
    **痛みを伴う際も起こる→痛みが伴っているか確認する

    機能性構造性
    筋分布の特徴上肢では指の屈筋
    (握力低下などのわかりやすい)
    や手関節屈曲の麻痺が目立つ
    上肢では屈筋,
    下肢では抗重力筋(伸筋)
    が比較的保たれる傾向
    抗重力筋の障害障害されやすい
    (例:大殿筋, 大腿四頭筋など)
    障害されにくい
    (特に大殿筋は筋ジストロフィー以外では保たれる)
    努力の様子顔をしかめる、声を出すなど「力を入れている」演技的な強調力を入れる様子は自然で、過剰な演技は見られない
    拮抗筋・近位筋の動員拮抗筋や離れた近位の筋肉に不必要なほど力を入れる障害筋に対する代償動作はあるが、過剰ではない
    筋力の変動性突発的で持続できず, 力が変動する筋力は一貫して低下し, 持続的に障害される
    症状の時間的変化日によって変動し, 不連続に回復する徐々に進行または安定して持続する
    日常動作への影響麻痺筋を使う動作が障害されず、怪我しない
    (例:転倒しない)
    麻痺に応じた日常動作の障害や転倒リスクがある
    検査所見との一致神経学的検査と症状が一致しないことが多い検査所見と症状が一致しやすい

    【診察】

    • 腱反射正常
      *随意的筋緊張抑制などで抑制されたり, 亢進されることもある
      **亢進している時は正常の潜時と違い, 少し遅れ, 誇張されたように起こることが多い
    • Babinski徴候陰性:絶対条件

    <顔面の障害>

    • 広頸筋徴候:口をへの字型にした際, 頸部の表層の広頸筋が構造性であれば浮き出てこない
      *広頸筋は顔面神経支配
    • 片側麻痺でも口笛はふける
    • 舌の片麻痺対側への偏倚
      *構造性は片麻痺側へ偏倚
    • 胸鎖乳突筋の機能性麻痺:障害と同側への回旋が障害される
      *胸鎖乳突筋は両側性のため,機能性では通常障害されない

    <上肢運動麻痺>

    • 腕落下試験で顔を打たない
      *低血糖性で機能性と同じことがあったという報告もあるため注意
    • 上肢バレー試験:回内を伴わない下降
    • 逆説的手関節屈曲:MMTを手掌面上向き(WFfl)と手掌面下向き(WFex)で行い比較する
      *WFflの方がWFexに比べると,筋長が短い(手首に腱が近い)ので収縮力は大きく,また回転半径も大きいので,生成されるモーメントはWFflの方がWFexよりも必ず大きい.
      →機能性ではWFexではbreakされず, WFflではbreakされる(構造性と逆)
      *診察時はWFflをやり, 他のMMTを挟んで最後にWFexをやると出やすい

    図:参考文献3から引用

    • Supine catch sign(回外捕球徴候):下垂手/回外させると手は反対側に下垂する+指も進展する
      *橈骨神経麻痺では回外しても下垂しない/中間位くらい
    • 両側握力測定:両手で同時に握力を出してもらう(手を握ってっもらう形)
      →機能性:両側同時では健側も弱くなる
      *「麻痺している側に力を入れられない演技/思い込み」を両手の動作に拡張してしまうためと考えられる
      **片方ずつやってから同時に行わせるとわかりやすい
    • Abduction finger sign:健側の指を外転位で維持させる(2分ほど)
       健常/機能性:対側(患側)が外転してくる
       構造性:外転しない

    図:参考文献5から引用

    健側手(2)で抵抗に抗して指を外転させた状態をしばらく(原著では2分)維持すると、麻痺側手(1)で不随意な指外転共同運動が認められる

    <下肢運動麻痺>

    図:参考文献3から引用

    • Sonoo外転試験:下肢の外転(中殿筋)では股関節の外転側への回転が生じるため, 対側の中殿筋が収縮しバランスをとる
      →機能性:患側外転時, 対側も弱くなる
       健側外転時, 正常に働く

    図:参考文献3から引用

      ●:拮抗できている

    • 大殿筋のMMT低下:下肢伸展位でベッドに押し付ける
      *腸腰筋低下, 大殿筋正常は構造性に特異度100%!!
    • Raimiste(レイミスト)徴候:健側股関節の内転や外転時に抵抗を加えると対側(麻痺側)がそれに伴って内転, 外転する
      *片麻痺の回復期でも起こりうるため注意
    • Strümpell の前脛骨筋現象:下肢を屈曲させようとした際, TAに収縮が入るが, 機能性では起こらない
      *TA:腓骨神経支配/L4-S1 大腿四頭筋:大腿神経/L2-4

    <歩行障害>

    • 麻痺肢を引きずるように歩く
    • 心因性のRomberg徴候:大きく揺れるが倒れない
    • 転倒を伴わない突然の膝折れ

    <不随意運動>

    • 気をそらすと消失
      *指タップや計算, 病歴聴取など
    • 振戦同調試験:健側で真似ると振戦が一過性に消失したり, rhythmが変化する
    • 他者が静止させようとすると震えがひどくなる

    <感覚障害>

    図:参考文献10 から引用

    • Yes/No test:閉眼し, 麻痺側を触る, 分からなかったら分からないというよう伝える
      →機能性:触った際[分からない]という
       構造性:触っても分からないため、何も言わない

    <視覚障害>

    • 円筒性視野狭窄:人一人分しか視野がないと脳内で決定される

    図:参考文献3から引用

    • らせん状視野狭窄

    【検査】

    • 神経伝導検査:CMAP正常, F波正常
    • 筋電図:弱収縮での動員パターン正常で, 発火頻度が上昇しない賦活不良を呈する→中枢性筋力低下

    <盲>

    • VEP(視覚誘発電位)

    <感覚障害>

    • 体性感覚誘発電位

    【診断】

    • 除外診断ではなく, 症候から積極的に診断をする!
    • 神経学的に説明できない存在が必要
    • 心理的要因の特定は診断の助けにはなるが必須ではない

    【治療(介入方法)】

    • 診断名, 必ず回復することを伝える
    • 座位でHoover徴候を行い, 実際に健側を挙上時に患側に力が入っていることを認知させる

    そのため筆者は

    今回、診察や検査をして構造的な異常はありませんでした。ですが、実際に「神経症状」を認めています。これを機能性神経障害といいます。
    これは、車でいう道路はしっかり舗装されていますが車が走っていない状態のようなものです。
    なぜこのようなことが起こるかは詳しくは解明されていませんが今脳のそこの神経のスイッチをオンにすることができない状態です。
    ですがこれは命にかかわるものであったり、今後症状が悪くなったりはしません。時間経過で必ず回復します。

    とお伝えするようにしています。
    ICの際にお役に立てれば幸いです。

    【参考文献】

    1. 橋本圭司ほか.FND(機能性神経障害)における脊椎・脊髄・神経筋の神経症候学の基本.
    2. 日本臨床神経生理学会誌.「10.18937/09144412_33_3_mf.5002201326」.第33巻第3号,2022年.
    3. 園生雅弘.精神科との境界領域について:機能性神経障害を中心に.臨床神経学.2023;63(増刊号):S123–S128
    4. 園生雅弘.心因性疾患(変換症/転換性障害;ヒステリー)の現在―ヒステリー性筋力低下(機能性筋力低下)の診断.臨床神経学.2023;63(増刊号):S129–S134.
    5. Sonoo M. The Abduction Finger Sign: After keeping finger abduction with the sound hand. In: Sonoo M, ed. Clinical Neurophysiology of Functional Movement Disorders. ResearchGate. 図3. https://www.researchgate.net/figure/The-Abduction-Finger-sign-After-keeping-fi-nger-abduction-with-the-sound-hand-2_fig3_261032919 (参照日:2025年11月19日)
    6. 機能性運動障害・感覚障害・神経障害診療ハンドブック.脳神経内科領域における診断と治療の実際.
    7. Edwards MJ, et al. Functional neurological disorder: new subtypes and shared mechanisms. J Neurol Neurosurg Psychiatry. 2019;90(Suppl 2):A5.2.
    8. 藤原俊之ほか.機能性神経障害の診断と治療:臨床神経学の新展開.臨床神経学. 63巻3号,2023年.
    9. 日本神経学会.機能性神経障害に関するガイドライン.脳神経学雑誌. 第63巻第3号,2023年.
    10. 医学ことはじめ. 心因性と器質性疾患の鑑別. 2021年7月8日. https://igakukotohajime.com/2021/07/08/心因性と器質性疾患の鑑別/