血液検査の手技が分かっても採血管についての知識がなくては適切に検査結果を理解することはできません。
基礎からやっていきましょう。
種類
1, 凝固促進剤
・シリカゲルの微粒子や珪藻土, トロンビンなど
・血清(血液が凝固した血餅を分離した上澄み)を得るために, 凝固反応を終了させる必要がある
2, ヘパリン
・酸素分圧, 二酸化炭素分圧など血液中のガス分析に使用
・ヘパリンはアンチトロンビンⅢを促進し, トロンビンを不活性化することで凝固反応を阻止する
・陽イオンの濃度に影響を与えない
3, EDTA塩類
・EDTAは様々な電荷の陽イオンと錯体を形成する性質を持っている
→血液と混和すると凝固反応に必要なCa2+がキレートされ凝固反応を阻害する

・EDTAは金属依存性プロテアーゼの活性を抑えるため, ペプチドホルモン(インスリンやGLP-1. PTHなど)の分解を妨げる
→一部のペプチドホルモン採血にも適している
<EDTA依存性偽性血小板減少症(EDP)>
・EDTA塩の存在下で血小板凝集が生じる現象のこと
・GPⅡb/Ⅲaなどの血小板膜上の膜たんぱく質に配位しているCa2+イオンがキレートされることで構造が変化し潜在性抗原が露出する
→患者の血中の免疫グロブリンがそれに反応して凝集が起こる
・悪性腫瘍, 肝疾患, 自己免疫疾患, 抗菌薬投与中などの免疫刺激状態と関連が指摘されているが, 健常者でも認めることがある
・対応:

土屋直道,松尾収二:EDTA依存性偽性血小板減少症における血小板数推移パターンおよび抗凝固剤としての硫酸マグネシウムの有用性.Sysmex Journal Web.2019;20(3):1–9.から引用
4, クエン酸ナトリウム
・血液との割合を正確に分注する必要がある
・凝固/線溶系:1:9
・赤沈:1:4
・EDTAと比べて弱いCa2+キレート作用を有する
→塩化カルシウム添加により凝固反応を再開させることが可能
採血管の順序
・凝固管:組織液に含まれる組織トロンボプラスチンの混入をさせない
*PT, APTTは優位差ないが, TATなどを採取する際に影響がある可能性がある
→1本目を避ける
検査結果に影響を及ぼしうる要因
1, 血液成分の生理的変動や食物摂取など
1-1:日内変動


1-2:月経変動


1-3:食事摂取
→早朝空腹時採血で統一するのが望ましい


2, 手技
2-1:体位
・立位では重力により下肢の毛細血管内圧が仰臥位に比べ上昇する
→水や電解質などの低分子物質は血管から組織間質に漏出する
+循環血漿量が立位は仰臥位に比べて10%低下する
→蛋白質や脂質などの高分子物質や血球成分は約10%濃縮される
*座位では約5%
+循環血液量低下によるレニン,カテコールアミン,アルドステロンの上昇, ANP,BNPの低下などがみられる可能性がある

(内科医が知っておくべき検査の最新情報;臨床検査の進歩より引用)
2-2:採血部位

*pO2, PCO2は中心静脈と末梢静脈でも差が出るため注意!
2-3:駆血
・駆血時間が長引くと, 徐々に末梢の静脈内圧が上昇
→水, 電解質, グルコースなどの低分子物質が血管外へ漏出
→高分子物質や血球成分の濃度上昇
・特に5分以上の駆血は採血結果に影響を及ぼす
→1分以内の採血が推奨されている

(内科医が知っておくべき検査の最新情報;臨床検査の進歩より引用)
・クレンチング, 手を強く握る,叩く:血清K濃度の上昇をする報告がある
*クレンチング:手掌を開閉させて静脈の怒張を促すこと
2-4:溶血
| 原因 | 機序 | 対応 |
| アルコール綿 | 穿刺時にアルコールが血液中に混入 *アルコールは赤血球膜を直背う障害する | 十分に乾燥させる |
| 23Gより細い針や 直針での採血 | 急速な吸引や採血管への分注で血液が泡立つ | 22G以下の採血針を使用する 吸引を緩徐に行う |
| 規定量取らない | 採血管内に陰圧が残る | 必要量を採取する |
2-5:分注
・採血管内に含まれる凝固促進剤などの採血管添加物が後方針やゴムスリープを介して次の採血管に混入する恐れがある
→血液の逆流を抑えて分注を行う
2-6:その他
・直射日光:ビリルビンやCK, ビタミンC, 葉酸などが低下する
・血糖:全血での採血では血球に含まれる解糖系が進む
→フッ化ナトリウムなどの解糖阻止剤入りを使う
参考文献
・内科医が知っておくべき検査の最新情報;臨床検査の進歩
・土屋直道,松尾収二:EDTA依存性偽性血小板減少症における血小板数推移パターンおよび抗凝固剤としての硫酸マグネシウムの有用性.Sysmex Journal Web.2019;20(3):1–9.
